彼の部屋
バニラアイスと
キンモクセイ
経てば経つほど
甘くなるよと
彼の部屋に着くと、テーブルの上には2つのバニラアイスが置いてある。
少し空いた窓からはかすかにキンモクセイの香りが漂っていた。
玄関の鍵を閉めたのだろうか、「カチッ」という音がすると、彼は背後からこう私に囁きかける。
「もう数分すると、バニラアイスは丁度良く溶けて、甘く食べやすくなるだろう。
そしてもう数日すると、キンモクセイはより甘く芳しくなるだろう。
さらにもう数ヶ月すると、私たちは愛するということがどんなに甘美なものであるか知ることになるだろう。」