那須越えて
為さぬ息子に
言わぬ母
荒れた岩肌
髪ぞ白ける
那須を越えて田舎に帰る私。
那須連峰のような立派な目標を掲げて東京に来た私だが、30歳を過ぎて何も成し遂げていない。
母はもう子供ではない私には何も言わない、言ってくれない。
母の運転で家路に向かう途中、車窓からは荒れた岩肌の那須連峰が見える。
隣で運転する60歳をとうに過ぎた母の手も、仕事で疲れ切っていて荒れているのが見える。
山上の方はすでに雪で白くなっており、母の髪も帰る度にどんどんと白くなっていく。
車内は、何を話していいか分からない私と何も話すことができない母で白けていた。